本当の循環とは何か?

この前、ホクレンの職員との交流会があり、様々な部門に携わっている方々と話をすることができた。
今自分が興味を持っていることは、土のこと。
酪農は、牛を飼うのが毎日の仕事だが、健康に飼うための牧草づくり、さらには良い牧草を育てるための土作りがなにより大事である。
毎年、牧草地には、牛舎からでた牛の糞尿(堆肥)を秋に散布して、次のシーズンに備える。そして、春には、たいていの農家は、化学肥料を散布する。
エネルギー保存の法則に従えば、牧場の外に出た分は、外から別の形で補わなければならない。太陽光のエネルギーや、牧草地にあるクローバーの窒素固定など、目で明らかに見えない形での流入はあるが、やはり何も施さないのは、常識的に見れば、良くない。牧草地がやせてしまう。
健康な土に必要なのは、適正な量の窒素(N)、リン(P)、カリ(K)、石灰(Ca)、苦土(Mg)、ナトリウム(Na)、鉄(Fe),さらには微量な要素であるマンガン(Mn)、ホウ素(B),銅(Cu),亜鉛(Zn)などがある。
酪農家の中には、そういうのを考えないで、毎年同じ肥料を撒く人、そもそも肥料をまかない人、土壌分析を毎年して、その値に見合った肥料を毎回考えてまくひとなど、いろんなやり方があるが、要は、とにかく牛が喜んで食べる草を育てれば、どうでもいい。
前置きが長くなったが、肥料も有限の資源なので、生産資材課の方に、それぞれの肥料成分が、あと何十年もつのか、質問してみた。
窒素は、原油の精製の時にでる尿素が主原料であり、石油化学産業がある限りは、出続ける。リンは、外国(中国など)にあるリン鉱山からリン鉱石が掘り出されて、あと90年はあるそうだ。カリもカリ鉱石が原料で、まだまだある。石灰は国内にあふれるほどある。苦土は外国産…。
とにかく化学肥料は大体が輸入物。消費者の目には見えない形で、日本の農業は海外に依存している。
それはそれと、あんまり深く考えないか、やっぱり自国の食糧くらい、自国でまかなうべきだ!と、あくまでかたくなになるか、どちらがいいのか…。
江戸時代にはもちろん肥料の輸入なんてしていなかったのだが、都市部にあふれる人間の糞尿を、有機質肥料として、田園地帯に輸送する流通経路があったそうだ。現代の一見スマートな社会と、江戸時代の社会と、どちらが成熟した社会なのだろうか?
とにかく、新しくていい技術は取り入れるべきだし、過去を見ていいと思う考え方なり技術も、積極的に取り入れるべきだと思って、それを実際に自分の牧場に生かしていきたい。
今はちょっと理系チックに土に向き合おうとしている。