目指すもの

7月は牛の分娩が続いていたが、3日前にひと段落ついた。一昨日までは牛の削蹄(さくてい:つめきり)を削蹄師さんにやってもらったりして、なにかと忙しかった。そうこう言ううちに8月は二番草の収穫が始まる。夏場はあっという間に終わってしまう。
燃料がどんどん高くなってきている。多分俺の生きているうちに枯渇するかもしれない。そのとき世界はいったいどうなるんだろう?酪農だって近代化に伴ってトラクターで牧草収穫できるようになった。そのトラクターは燃料をボンボンたいて走る。今から牛や馬を使って牧草収穫しろと言われたら可能なんだろうか?それとも燃料に変わるエネルギーができるのだろうか?トラクターは馬力が必要だからかなり大変だろう。
交通手段は?果たして交通手段はどうなるんだろう?10年後、俺はたまに福岡に里帰りすることなんてできるんだろうか?それが一番心配だ。やっぱりたまには実家に帰りたい。もう丸二年帰っていない。
燃料どころか牛のえさだって高くなっているし、牧草地に散布する肥料も高くなっている。とにかく投入するものは全部高くなってきている。いずれは、ここでとれるものだけで酪農をしていかなければいけない。つまりは、有機酪農だ。
最近、有機農業について参考になる本を買うことができた。キューバの有機農業についての本だ。キューバベルリンの壁崩壊までは、旧ソ連に食糧を依存していたのだが、崩壊後の経済危機で食糧はもちろん、肥料や農薬もほとんど入らなくなったらしい。それでキューバの市民が選択したのは、空き地を耕して、肥料や農薬を使わずに農作物を生産する。つまりは有機農業。目の前に飢えがある中で、彼らはそれまで可能とされていなかったことをわずか10年で軌道に乗せた。
一般常識で言えば不可能とされることでも、切羽詰れば人間なんでもできる。俺だってわざわざ暑いところから寒いところに来たのだから、常識にとらわれないで自分の理想に向かって突っ走ろうではないか!
まずはそれに向けて日々勉強、努力するしかない。そうしなければ前に進まない。