乳牛とサラブレッド

先々週、札幌に向かう汽車の中で、暇つぶしにとスポーツ雑誌を購入したら、丁度競馬の特集があった。
数々の名馬や、サラブレッドを育てる厩舎、そして様々なドラマなどを読んでいるうちに、卒業自転車旅行で神戸まで向かう前に、当時弟が勤めていたサラブレッドのファームに行ったことを思い出した。
初めて見るサラブレッドは、予想よりは大きくはないものの、筋骨隆々としていて、足はその体を支えるには細すぎるように見えた。そして弟はその馬にまたがって、信じられないスピードで走っていった。
そのときに、弟の上司さんと話す機会があった。今のサラブレッドは、とにかく速く走るために遺伝的な改良をされた結果、このような形になった。時には、意図的に近親交配をすることもあるという。つまり、足の速い血統の馬が生き残り、その馬達が交配をして、より速く走ることの出来る馬を生む。それを繰り返した結果、今のような野生とはかけ離れた形をした馬になったのだという。
実際に目の前にいたサラブレッド達は、自分達がそのようにして生まれたことなどは全く知らないような感じだったけど、生まれながらにして走る運命を背負っていることは感じているような気がした。
そして今俺は乳牛を相手に仕事をしている。ある目的のために遺伝的な改良が施されたという点では、サラブレッドと乳牛は全く同じだ。違うのは、その目的が「速く走るため」であるか、「乳を人間に供給するため」であるかの違いだけである。サラブレッドは人の夢を乗せて走り、乳牛は人間の食料となる牛乳を毎日生産する。
心なしか、乳牛とサラブレッドの眼差しは似ている。つぶらで、どこか悲しい。
自分にはひとつの夢がある。馬を一頭飼って、牛の放牧を馬に乗って見回りたい。
最近は真面目な話ばっかりだな〜まいったな〜!