登山者

数日前、山野井泰史というプロクライマーのドキュメンタリー番組を見た。彼は世界的に有名なクライマーだが、数年前に雪崩にあい、足と手の指を合わせて10本なくした。だが山にかける情熱は消えず、その番組では、グリーンランドの未踏の壁に挑んだ様子が映されていた。
多分普通の人なら、いくら山が好きでも、指がなくなった時点で情熱は失せるだろう。番組の最後に、何故彼が山に挑み続けるのかという問いにこう答えていた。
「高いモチベーション。あきらめるとかあきらめないとかいうことではなく、ただ山に登りたい、頂上に辿りつきたいという高いモチベーション」
ああ、彼は本当に山が好きなんだなとテレビからでも分かった。
仕事でも、スポーツでも、今取り組んでいることを山に例えてみると、人間だれでも登山者なのかもしれない。クサイ。
山の形も、高さも、登り方も人それぞれ。まだ登る山も決めかねている人もいる。登る理由もいろいろ。でも、「好きだから」…これに勝る理由はないだろう。
今一生懸命取り組んでいること。それ自体が好きなことだったら、本当に幸せなことだ。そうなら絶対にトップに立てる。
俺が登っていた「ボート」という山は、多分高尾山くらいで、登る理由も陳腐だった。今「ボート」という山に登っている後輩たちには、是非頂上からの眺めを俺に教えてほしいものだ。