スーツへの憧れ

コーヒーブレイクに昔話でも一つ。
自分は学部時代に一年留年した。大学から「君は優秀だから是非もう一年残ってほしい」と言われたからだ。(実際はその逆…)
その一年は、生活費を稼ぐためにアルバイトをした。一つは塾講師で、もう一つは、海外出張をするサラリーマンに、海外で使用可能な携帯電話をレンタルする会社の営業である。
自分は月、金の週二回、スーツに着替えて神田にある会社に向かい、そこで携帯電話をかばんに入れていろんな会社に行き、お客様まで携帯電話を届ける仕事をしていた。大体のお客様は、僕のような世間知らずでも聞いたことのあるような大手の会社のサラリーマンで、受付(大体かわいい)に許可をもらってからオフィスに入ってお客様に届けていた。
丸の内、有楽町、飯田橋、お台場などなど、電車でいろいろな場所に行った。いろんなオフィスに入るに従い、まるで自分がエリートサラリーマンであるかのような錯覚を覚えた。そしてお客様の賢そうな雰囲気にやられ、あわよくば俺もその一員になりたいと思ったものだ。
そのような淡い願望をかなえてくれるほど世間は甘くなく、俺は留年の後にあれよあれよという間に道をそれていったのである。
今振り返れば、俺の人生で最も頻繁にスーツを着用した年だった。俺は就職活動をしなかったから。留年した年に一番スーツを着るというのも変な話だが、いい経験だった。
以上、何も意味のない昔話でした。