ふとした出会い

今年の3月、俺は学生生活の最後として、東京から実家の福岡を目指して自転車旅行に出かけた。結局は時間が足りず、神戸からはフェリーで帰ってしまったが…。それでも自分にとってはいい思い出だ。
その中ではいくつかの出会いがあった。
雨の中自動車専用道路に迷い込み、パトカーから追いかけられて職務質問されたこともあった。そのとき、警官さんと30分立ち話をした。警官さんの一人がボート経験者でいろいろ話した。北海道で酪農をすることも話した。
自転車がパンクしたときに、近くの町工場のおじさんおばさんから修理器具を貸してもらった。日本人の温かさに触れた。
その中でも一番こころに残っているのは、2日目に泊まった浜名湖にあるユースホステルで同部屋だった、中学生の自転車野郎である。彼は両親に頼み込んで、学校を無断で休んで日本一周の旅行に出かけたのだ。しかもほとんどは持参したテントでの生活。お金が無いから。なんで学校を休んでまで日本一周の旅をするの?と聞いたら、彼は不登校だったらしくて、現状を変えたかったそうだ。
次の日、俺達は2人で名古屋を目指して一緒に自転車を漕いだ。結局俺の自転車がパンクして途中で別れることになった。「俺は4月から北海道に住んでるから、道東にある浜中町っていうところに着いたら、○○牧場の場所を聞いて俺に会いに来てね。」「分かったよ。」そういう約束をした。携帯の番号は交わさなかった。すぐ連絡が取れたら、会えた時の喜びがなくなってしまうから。
彼はいま日本のどこらへんにいるのだろう?今日の朝ふと思い出した。会えたらいいな。