乳牛にハッピーエンドはない

またずいぶんと書いてなかった。

去年の今頃NZに行っていた。時が経つのは早い。

6月15日に牧草収穫が始まり、天候不順などを経て、なんとか収穫が終了した。そのまま牧草地への尿散布や放牧地の掃除刈りなど…。農繁期になると流れるように一年が過ぎていく。

おとといの朝。分娩近い牛がいたのに夜中牛舎の見回りに行かなかったので、「大丈夫かな~」と心配しながら牛舎に入った。その牛はまだ分娩していなかったのでホッとして反対側を振り返ると、昨日まで元気だった一頭の牛が、見るも無残な姿で死んでいた。前日の夜に風が強く、その風が牛の上にある電気ショッカー(糞尿をするときに、牛床を汚さないようにするためのもの)を落としてしまい、その電気に牛がびっくりして無理やり前に突っ張ってしまい、引き返せない状態で、首輪に首が引っ張られて窒息死していた。

唖然としたが、このままの状態で仕事はできないので、妻と一緒にロープを牛につけて、トラクターで引っ張って牛舎の外に出した。

こんな死なせ方は10年やってきて初めてだった。脳裏にその死にざまが焼き付いている。

牛飼いをやっている以上、アクシデントは起こりうるものだ。そのアクシデントで牛が死ぬこともある。それは10年の経験で覚悟はしているが、それに抗いたい気持ちがあるのも事実で、なるべくなら起こらないでほしいと願っている。

でも起こる。そんな時はどうしようもない気持ちになる。でも毎日の仕事は目の前にある。だからやる。そうしなければ他の牛も死ぬし、家族も食っていけない。

その失敗で勉強するしかない。数々の失敗を経て、一人前の農民になるのだ。